2020.11.19

  • クリエイター訪問記

クライアントの情熱に負けない、広告写真を

「こんな写真どうやって撮影したの?」

徳島市の写真家・米津さんの写真を見れば誰もがそういった感想を抱きます。その魔法のような写真は、見る人を惹きつけてやみません。米津さんの写真術は、ほぼ全て独学で学んだといいます。誰に教わることもなくゼロから自分で作り上げるからこその、型にはまらない作風。

今回は、そんな徳島を代表する写真家・米津さんのインタビューです。 

写真家・米津 光さん

米津さんが写真を始めたのは高校生の頃。当時は美術部と写真部を掛け持ちしていたそうです。「昔から美術は好きだったんですが、僕には絵の才能があまりなかったんですよね。それで美術部はすぐに辞めたんですが、写真部の方も2年生のときに辞めてしまいました。写真って別にどこかに属していなくても自分でできますよね。写真部では現像の技術を学べたらそれで十分だったので(笑)」

その後、大阪芸術大学写真学科に進学した米津さん。ですが、その大学もわずか一週間で退学してしまったと言います。「まぁ元々大学で写真を学ぼうという気もなかったんですが、一番の理由は当時の教授との考え方の違いでしたね。入学後の最初の集まりで教授の話を聞いて、それですぐ辞めてしまいました (笑)。そのあと一時写真館に就職したりもしましたが、それもすぐに辞めて、結局独学で写真を勉強して28歳で独立しました」 

写真家としては、今でも勉強の日々 

米津さんが独立した当時、大きく影響を受けたのは一冊の写真集だったんだそう。「ヨーロッパやアメリカなどの広告写真を集めた写真集を見たんですよ。で、それがすごくカッコ よくて。広告写真なのに、まるでアートのように感じられたんですよね。それで『自分もこれがやりたい』と思い、その写真を見ながらライティングの研究をするようになりました」 

そのように独学で写真を撮影してきた米津さんは、当時は撮影の仕事をこなしながら勉強する日々だったそう。「仕事現場でクライアントの要求に応えるためにライティングなど撮影方法を試行錯誤することが僕にとっての勉強なんですよ。日々それを繰り返すことで自分の中の撮影の引き出しが増えていく。だから僕にとっては仕事イコール勉強なんです」

写真家としては既に完成されているようにみえる米津さんですが、仕事をしながら勉強というスタイルは「今も変わらない」と言います。

「一生勉強ですよ。たぶん死ぬまで完成することはないと思います(笑)」 

クライアントや商品の情熱に負けない写真を 

米津さんの写真家としての大きな転機のひとつが、2008年のキャノンカレンダーに使用する風景写真を撮りおろしたこと。 

「キャノンには『作品の視点が新しい』と評価してもらったんですよ。僕は風景写真では誰もが シャッターを切る王道の景色には目もくれずに、他の人はスルーするような場所で撮影するんです。一見普通に見える道端とか。でもそういうところに何か光るものがあるんですよね」 

風景写真をはじめ、自身の作品では唯一無二な作風がある米津さんですが、広告写真では決して自分のエゴは出さないと言います。

「広告写真ではクライアントが一番ですから。もちろんプロとして構図やライティングの選択肢は提案しますが、最終的にはクライアントの意向に従って撮影します。中には無理難題な要求もありますが、僕はそういった仕事の方が好きですね(笑)。そして、撮影する商品やクライアントの情熱に負けないような写真を撮りたいといつも思っています」

最近ではドローンを使ったライティングなど新たな表現にも挑戦している米津さん。

米津さんの写真は、クライアントと共にまだまだ進化していくはずです。