2023.06.27

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【とくしまデザイン塾レポート】第2回「コンセプトの立て方、ターゲット設定、ニーズの情報整理」

「デザインの入り口」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?

デッサンや色彩感覚、フォントの知識など、目に見える要素をイメージする方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、これらはデザイン制作において欠かせないスキルです。しかし、それらの技術を十分に発揮していたとしても、目には見えないある部分が欠けていると、本質的にデザインをしているとは言えないかもしれません。今回は、その“ある部分”について伺った講座をレポートします。

2023年6月14日(水)、第2回目の「とくしまデザイン塾」を開催しました。テーマは、「コンセプトの立て方、ターゲット設定、ニーズの情報整理」です。講師にアドファーレン代表の大東浩司さんにお越しいただきました。

大東さんは、専門学校を卒業後、デザイナーとして百貨店に就職。売り場に立ちながら広告のデザイン業務を担い、消費者の購買行動や、流通、経営、お客さんとのコミュニケーションを学びながら8年勤めました。独立してからは、県内外のクライアントの広告やパッケージなどのデザインやロゴ制作、エディトリアルデザインを手がけています。

今回の講座のタイトルは、「デザインの入り口」です。「ものづくり全般において、入り口を間違えると出口(アウトプット)を間違えます」という言葉からレクチャーが始まりました。この“入り口”にあたるものが、コンセプトとターゲットです。コンセプトとは「デザインするための共通認識(言語)」であり、ターゲットは、「誰に伝えたいのか共有したもの」であると大東さんは続けます。

では、なぜコンセプトとターゲットが大切なのでしょうか。大東さんは、「デザインに関わる人が皆、同じ視点や考え方を持ってゴールに辿り着くように、迷ってしまったときには、全員がもとの位置に戻ることができるように入り口(=コンセプトやターゲット)をしっかりと見つけておくことが重要です」と説明してくださいました。

つまり、実際にデザインに取りかかる前に、クライアントとデザイナーの認識のズレを減らして、目指す場所を分かりやすい言葉で言語化しないと、最終的に同じゴールにたどり着けないのです。

その後は、コンセプトやターゲットの設定方法について実際の事例を交えながら分かりやすく解説いただきました。

次に、ニーズの情報整理の方法として大東さんが普段どのようにクライアントから情報を引き出しているのか、お話くださいました。大東さんは「聞く、見る、知る、作る、話す」という順番で、情報を収集すると言います。

その中でも最も重要なことが「聞く」ことだそうです。「人の話を引き出すのが上手な人の方が、良いアウトプットを作りますね」と話す大東さん。普段の仕事でも、大東さんは雑談を中心に“耳”ではなく“心”で聴くことを意識しているそうです。続けて他の情報のインプット方法についても詳しく解説いただきました。

最後に、アウトプットのコツについてご紹介いただきました。「デザインはシンプルな方が良いと思われているかもしれませんが、シンプルとは情報量を少なくすることではありません」と大東さんは強調します。必要な情報が削られると、見た目だけシンプルになって結局は何も伝わらなくなってしまうからです。「シンプルとは引き算ではなく、必要な要素をまとめて一つにする、究極の足し算なんです」と教えてくださいました。

しかし、うまく足し算できたとしても、デザイン制作で時間が進むにつれ、その見せ方でよかったのか、チームやクライアント内で迷いが生じてくることもあります。ここで再び登場するのが、「コンセプト」でした。コンセプト設計の段階でブレない軸(=コンセプト)を通していたら、判断の基準が明確になり、伝えたい内容や見せ方が途中でブレることはないそうです。改めて、コンセプトの大切さを実感することができました。

質問タイムでは、「クライアントとの打ち合わせの前に準備すること」「クライアントの事業領域の専門知識がない場合の対応方法」「ターゲットが全世代の場合のペルソナの設定方法」「複数人のクライアントと一緒にプロジェクトを進める場合の、コンセプトやターゲットの合意形成のプロセス」など、実務に踏み込んだ質問が飛び交いました。講義時間がオーバーするまで白熱し、一つひとつに対し、大東さんは真剣に応えてくださいました。

今回の講座で、デザインの強度を上げる目には見えない土台づくりについて学ぶことができました。

次回のご案内

さて、デザインの礎となるコンセプトやターゲット設定の方法を学んだところで、いよいよ実際に手を動かす際のテクニックを学びます。7月12日(水)の第3回「グラフィックデザイン」では、講師に佐藤あすかさん、坪井秀樹さんをお招きし、ロゴデザインをはじめとするデザインの設計方法や、紙媒体のデザインのテクニック、また商品を魅力的に見せるコピーライティングについてお聞きします。プロのデザイナーが解説する、実務で活きるテクニックが満載です。単発受講も可能で、開講日の1週間前まで申し込みできます。お楽しみに!