2021.06.04

  • クリエイター訪問記

妥協のない姿勢で、デザインの完成度を追い求めること

今回の訪問記は、徳島のクリエイター界では有名なあの方。徳島市でグラフィックデザインの個人 事務所『如月舎』を構える藤本孝明さんです。これまで数々のデザインアワードを受賞し、阿波おどりポスターやとくしまマルシェのデザインの他、有名企業のロゴデザインも手掛けられています。藤本さんの名前は知らずとも、徳島県民なら誰もがそのデザインを目にしたことがあるはずです。

グラフィックデザイナー 藤本 孝明さん 

子どもの頃は絵を描くのが好きで、『鉄腕アトム』の手塚治虫や『あしたのジョー』のちばてつやに憧れ、漫画家を夢見ていたという藤本さん。

「当時は絵を仕事にしようと思うと、画家か漫画家くらいしか選択肢が思い浮かばなかったんですよね(笑)。でも高校生のときに雑誌『イラストレーションNo.2』に出会って。それは広告のイラストを描くイラストレーターを紹介している本だったのですが、『世の中にはこんな職業があるんだ』と驚いたことを覚えています」

その後、イラストレーション誌のコンペに応募して奨励賞を受賞するなど、少年期からその才能を発揮していた藤本さんですが、あるとき、自分はただのイラストでなく、映画のポスターのように文字が入っているイラストが好きだと気づいたのだとか。そうして藤本さんは「イラストとデザインが両方できるクリエイターを目指そう」と、グラフィックデザイナーへの道を歩むことになります。 

地方でも最先端のグラフィックデザインを 

大阪芸術大学を卒業してから8年後、故郷の徳島で『Graphic Design Studio 如月舎』を開業した藤本さん。その前には東京のデザイン会社で働いていたそうですが、東京が最先端かと思いきや、徳島にはそれよりももっと高度なグラフィックデザインの仕事をしている人がいて驚いたといいます。

「当時はまだデザインするのにパソコンは使っていなかったですからね。でも徳島にはすでにMacを使ってデザインしている人がいて。だからというわけではないですが、そのデザインは徳島という地方にいながらも都会の仕事をしているかのように輝いて見えました」

そういった刺激も受け、藤本さんはその後、徳島を代表するタウン誌の表紙デザインを手掛けたり、数々のデザインアワードを受賞したりと、現在に至るまで地方にいながらも都会に負けないデザインを生み出し続けています。 

グラフィックデザインの4つのルール 

クライアントワークにおけるデザインでは、その企業や商品のコンセプトを具現化していくわけですが、藤本さんは自身のデザインで最も大切にしていることを、その“完成度”だと言います。 

「デザイン自体のレベルが低いと、いくらその企業や商品のコンセプトを表現していたとしてもダメだと思っています。コンセプトを的確に表現している上で、“完成度”が高くなくてはいけない。そのために、自分の中でのルールがいくつかあります」

そのルールがこちらです。

・原寸で考えること

・現場を確認すること

・現物で考えること

・プランはトコトン突き詰めること

「名刺でもポスターでも大きな横断幕でも、必ず実寸プリントを完成形にカットしてデザインをチェックしています。建物や看板の場合は、建設・設置する現場を見に行ってサイズ感や位置をシミュレーションしたり。また、商品パッケージやブックデザインではPC上のデザインだけでなく必ず実物を作って確認するようにしています。最後に、思いついたデザインのアイデアは全部作ってみて、見比べた上でプランを詰めていくこと。これらのルールは結構骨の折れる作業なんですが、必ず気付きや見落としが出てくるので、守るよう自分に言い聞かせています」

これらのルールを守っていると、提案するデザインに自信が持てるし、クライアントからの新たな要望にも柔軟に対応ができるのだといいます。

十分な実績も経験もあるようにみえる藤本さんですが、泥臭くも面倒にも思えるルールを守って今もデザインをされています。そのデザインに対する妥協なき姿勢が、長年クリエイターとしての第一線を走り続けられる理由なのかもしれません。