絵を描くことを生業とするイラストレーターはたくさんいますが、今回はその中でもかなりレアなタイプの方にインタビューしてきました。イラスト用のチョーク(オイルパステル)を使って絵を描く“チョークアーティスト”鈴木麗子さんです。さて、鈴木さんが描くチョークアートとはどのようなものなのでしょうか?
『チョークで絵を描く』という行為自体は、誰もが子どもの頃にやったことがあるでしょう。ですが、鈴木さんのチョークアートはそこからイメージするものとは全く違うものです。その作品はチョークで描いたとは思えないほど、多彩で、鮮やかで、滑らかに表現されています。ただ、イラストの中ではニッチとも言えるチョークアートの世界。鈴木さんはなぜチョークアーティストを志したのでしょうか?
「昔は普通に公務員をしていたんですよ。でもそのとき、このまま公務員を続けていると自分の人生の辿り着く先が見えてしまうような感じがして。だから、何かにチャレンジしてみたいと思ったんです。いろんな習い事をする中で、チョークアートに出会ったんですよ。はじめは体験教室だったんですが、子どもの頃以来久しぶりに絵を描いたら、すごく楽しくて。チョークアートは初めてでしたが、温かみや重厚さなど、普通のペンやデジタルで描く絵にはない魅力を感じました」
それから公務員を退職し、2018年にチョークアーティストとして独立し『すずの木アートデザイン』を開業した鈴木さん。近年は講師としてチョークアートの普及活動も行っています。
鈴木さんが使うチョークは、一般の方が想像するチョークとは少し違います。イラスト用のチョークは、クレヨンのような滑らかさがある特殊なもの。正式にはオイルパステルと言うそうです。そんなイラスト用チョークで描く作品の特徴について鈴木さんはこう話します。
「チョークアートは『指で描くアート』と呼ばれているんですよ。チョークで直接描くわけではなく、チョークの色はボード上に乗せるだけ。その色を指で広げたり混ぜたりして描いていきます。だから、デジタルのソフトで描いた作品のようにビシッと整ったイラストにはならないんです。でも、そういう“整っていない”ところがチョークアートのポイントでもあるんですよね。デジタルにはない温かみというか。あと、作品サイズも大きくて重いものになりがちなので、やっぱり物理的な重厚感もあると思います。個人の似顔絵にしても、店舗の看板にしても、納品時にはデジタルアートよりも喜んでもらえている実感がありますね」
鈴木さんはこれまでに、自主制作のイラストや個人の似顔絵だけでなく、店舗の看板やメニューボードなどのクライアントワークも数々手掛けてきています。チョークアートは最後に表面をコーティングするので、雨風があたる屋外の看板でも大丈夫なんだとか。そういったクライアントワークにおいて、鈴木さんにはひとつのこだわりがあります。
「チョークアートはデジタルとは違って、一度色を塗りだしたらもう後戻りはできないんですよ。だからイメージの齟齬がないように、打ち合わせはしっかり行います。その上で、クライアントには下書きまでを確認してもらって、それ以降は完成まで一切見せないようにしています。下書きに色を乗せていく作業の途中経過は見せない方がいいんですよ。見せたところで後戻りできないからという事情もありますが、やっぱり完成したチョークアートを見たときの驚きと感動を味わってもらいたいので。みなさん、納品のときには喜んでくださいますよ」
他にはない魅力がある鈴木さんのチョークアート。店舗の看板にすれば道行く人の注目を集めてくれますし、店内に飾れば温かな空間を演出してくれます。そんなチョークアートを、あなたのビジネスにも取り入れてみてはどうでしょう?