2023.02.22

  • クリエイター訪問記

デザインの真髄は細部に宿る

今回のクリエイター訪問記は徳島市八万町にある『木川隆志デザイン事務所』にやってきました。代表の木川さんはグラフィックデザイナーとしての仕事の他、中小企業庁徳島県よろず支援拠点コーディネーターや大学の非常勤講師を務めるなど、多方面で活躍されています。今回はそんな木川さんのインタビューです。

グラフィックデザイナー・木川 隆志さん

小学生の頃から絵を描くのが好きだったという木川さん。それも、ただ好きだっただけではなく、その頃から将来そういったことを仕事にしようと考えていたのだと言います。その後もその夢を持ち続け、グラフィックデザインの専門学校へ進学、そして卒業後はデザインの制作会社に就職と、順調にクリエイターへの道を歩んでいきます。そして後に会社勤めを辞め、一人のグラフィックデザイナーとして独立することになるのですが、その独立が自身のクリエイター人生にとって大きなターニングポイントになったのだと木川さんは話します。

「当時、先輩デザイナーからのアドバイスで独立することになって。実はそのとき結婚を控えていて、今思えば安定収入を捨てて独立するというのは冒険だったなと思うのですが、当時はバブル期の直前で、何をやっても成功するような時代だったんですよね。独立する以前は日頃からデザインの勉強をすることはほとんどなかったんですが、独立をきっかけに勉強するようになって。それまで私のデザインは自己流の感覚的なものだったのですが、ヨーロッパを起源とするデザインの歴史を勉強したりする中で、少しずつデザインに対するロジックができてきました」

企業とユーザーの間を取り持つニュートラルなデザイン


今では徳島文理大学短期大学部の非常勤講師として学生にデザインを教える立場でもある木川さんですが、クリエイターとしてもまだ現役バリバリです。そんな木川さんは企業案件のデザインにおけるポイントを「ニュートラルな立ち位置」だと話します。

「まずデザインはできて当たり前で、その上でデザイナーはニュートラルな立ち位置でないといけ ないと思っています。デザインというのは、企業とユーザーの間を取り持つもの。企業側に寄りす ぎてもいけないし、ユーザー側に寄りすぎてもいけない。ちょうど真ん中に立つ、ニュートラル な姿勢が大切なんです。あとやっぱり大切なのはクライアントとの信頼関係ですね。クライアン トが伝えたいことはもちろんヒアリングするのですが、デザインでの表現方法は任せてもらう方 が最終的に良いものができると思っています。だから、それを口出しせずに任せてもらえるだけ の信頼関係が大事です」

細部までデザインをコントロールすること

グラフィックデザインというものは、一般人の目線からすると全体を大雑把に見ているだけで、細かい部分までは注目していないのかもしれません。ですが木川さんは「細部に手を抜かない」ことがこだわりなのだと言います。

「世の中にある良いデザインというのは細部にこそこだわりを持って作っていると思うんですよ。細部までデザインをコントロールしているから全体が際立って見えるというか。一般の方が見ると、良いデザインだなとは思っても、具体的にどういう部分がすごいのかはよく分からないと思うんですよね。そういう“すごさの理由を分からせない”作品が良いデザインだと思っています」

細部へのこだわりの積み重ねが良いデザインを生むということを、木川さんはご自身の経験をもってよく知っています。理由はよく分からないけど、なぜか引き込まれる。改めて見ると、木川さんの作品にはそんなデザインが多いような気がします。