今回のクリエイター訪問記は株式会社とぶとり堂の佐藤あすかさん。グラフィックデザイン全般を手掛ける佐藤さんですが、その中でも特にキャラクターデザインを得意としています。実際、徳島の多くの企業で佐藤さんが生み出したキャラクターが採用されており、みなさんもどこかでそのキャラを見かけたことがあるかもしれません。
子どもの頃から絵を描くのが好きで、中学時代は美術部だったという佐藤さん。その後、ものづくりの職業に憧れを抱くようになり、タウン情報誌の出版社に入社することになります。そのときはデザイナーではなく編集者として働いていたそうですが、当時のことを佐藤さんはこう話します。
「編集者というのは雑誌づくりの工程のいろんな部分を担わないといけないのですが、私はマルチタスクが苦手だったんですよね。どちらかというと、何かひとつのことに没頭したいタイプで。そんなとき、勤めていた出版社の自社HPを作ることになって、私がwebデザインをやることになったんです。それがきっかけでwebデザインの面白さに気づき、出版社を退職して大阪の専門学校にwebデザインを学びにいきました」
専門学校を卒業した後は一時就職したり先輩デザイナーの下で学んだりしながらスキルを磨き、2003年にフリーランスのグラフィックデザイナーとして独立することになります。
前述したように佐藤さんがクリエイターを志すきっかけはwebデザインだったわけですが、元々イラストが得意だったこともあり、キャラクターデザインがメインの仕事のひとつになっています。中でも最も得意とするのは企業のイメージキャラクター制作です。
「企業のイメージキャラクターには、経営理念などのその会社の根っこにあるものを反映させるようにしています。だから私はお付き合いするクライアントさんの経営理念が何なのかをとても重要視しているんです。その経営理念に“あたたかいもの”があれば、ぜひお手伝いしたいなと思いますし、きっと良いものができると思います。効率や機能的なものだけを追い求めている会社ではなく、関わる人みんなが幸せになるような、想いのある経営者さんのお手伝いをしたいと思っています」
そのことを、『情緒的な価値』だと佐藤さんは話します。ある種の人間味のようなあたたかさが根っこにある企業との組み合わせで佐藤さんのデザインは最も力を発揮できるのかもしれません。
デザインにおいて、想いや感情といったクライアントが持つ深い部分を重視する佐藤さんですが、そんな佐藤さんのデザイン思考とはどのようなものなのでしょうか。
「デザインは、クライアントやユーザーのことを考える仕事です。クライアントの想いを表現しつつ、それを受け取るユーザーのことも考えてつくる。つまり、デザイン思考って“相手を思いやること”が中心にある考え方なんですよ。相手が今どういうことで困っているのか、それをどうすれば解決できるのか、探って、考えて、寄り添いながら解決案を表現するのがデザイナーの役割です。これからは、そういったデザイン思考をいろんな人に、とくに子どもたちに伝えていきたいと思っています」
これからの夢はデザインとデザイン思考によって『あたたかい、丸い世界をつくること』だと話す佐藤さん。そのデザインとデザイン思考は、企業の広報のみならず、経営指針にも良い影響をもたらしてくれるかもしれませんよ。