2023.10.19

  • マッチング事例

【前編】障がい者 × クリエイター 自由で真っ直ぐなアート表現を商品化へ

クリエイターのマッチング事例を紹介するこちらのコーナー。今回は障がい者の方たちとグラフィックデザイナーとのマッチング事例です。マッチングのきっかけとなったのは徳島県障がい者芸術・文化活動支援センターが開催した『Tシャツデザイン展』。障がい者×クリエイターでどのようなコラボレーションをしたのでしょうか?

710作品が集まった第3回全国公募「Tシャツデザイン展」

徳島県立障がい者交流プラザの廊下にズラッと並んだTシャツのデザイン原画。これらは『夏の空をTシャツで彩ろう』というテーマで全国公募して集まった710点のTシャツ型アート作品です。北は岩手県から南は宮崎県まで、全国各地の障がい者の方々の個性的な作品が並ぶ『Tシャツデザイン展』は今年で3回目の開催。毎回、全作品の中から優秀賞を選出しており、今回も5名の作品が受賞しました。

その表彰式は8月に開催された『交流プラザフェスタ』の中で行われ、副知事から作者に表彰状が手渡されました。
このTシャツデザイン展を主催する徳島県障がい者芸術・文化活動支援センターの西木さんは、この公募を始めたきっかけをこう話します。

「元々は、障がい者交流プラザに作ったギャラリーの開設記念の展示を行うために始めたんですよ。それと、障がい者の人たちのアート作品を発表する場を作りたかったというのもあって。そういう場って実はあまりないんです。でも、このTシャツデザイン展は『気軽に参加できる』とみなさん喜んでくれています」

直感的に、ストレートに。障がい者たちの力強いアート作品

展示されている710点の作品を見ると、どれもすごく個性的で、迷いなくストレートに描かれているように感じます。これまで数々の作品を見てきた西木さんに障がい者の方々が生み出すアートの魅力について聞いてみました。

「障がい者だから、というわけではないですが、みなさん作品作りのときに迷いなく手が動いてアートが出来上がっていくんですよね。作品作りの考えに迷いがないぶん、とてもストレートな表現ができていて、作者本人の想いが感じ取れるようなアート作品になっています。直感的に作られるアートだから、直感に訴えてくる力があって。心を動かされる作品も多いです」

そんな作品の中から優秀賞が選ばれるわけですが、第1回のTシャツアート展のときには優秀賞の受賞者に作品をそのままプリントしたTシャツを贈呈、「売って欲しい」という声を受けて第2回のときにはTシャツの販売も行っています。

「今年の第3回目は、徳島県内のクリエイターに参加していただいて、障がい者とクリエイター協働でのTシャツの商品化をやろう、ということになったんです。クリエイターの方々に障がい者の魅力的なアートを知ってもらいたかったというのと、障がい者の方や障がい者施設の職員さんにもプロのクリエイターの仕事を知ってもらいたいというのもあって。そんなときに、徳島クリエイターズライブラリというHPを見つけて、そこに登録されていたグラフィックデザイナーさんに協働制作をお願いしました」

障がい者とクリエイターのマッチング

今回参加したクリエイターは5名。協働制作だけでなく作品の審査から担当し、5名それぞれが優秀賞として選んだ作品をベースに原作者にヒアリングもしながらデザインを行い、Tシャツを商品化しています。

「障がい者施設で障がい者のアート作品のTシャツを商品化しているところもあるのですが、プロのデザイナーと協働している施設はほとんどないと思います。このTシャツデザイン展をきっかけに、こういったやり方があるんだということを知ってもらえたらなと。また、障がい者×クリエイターでこんなに素敵な作品ができるんだということを、いろんな企業の方にも知ってもらいたいですね」

西木さんは、障がい者の魅力的なアートを企業の広報などにも活用して欲しいと話します。確かに、企業と障がい者とクリエイターの3者マッチングで、これまでにないものが生まれそうです。

そして、肝心の今回の優秀賞の商品化、一体どんなTシャツに仕上がったのでしょうか?それは後編の記事でご紹介します!