2024.02.27

  • クリエイター訪問記

映像の魔術師・VFXアーティスト

クリエイター訪問記では様々なクリエイターさんにインタビューしてきましたが、今回登場していただくのは特殊も特殊、VFXの専門家です。一般の人にとっては「VFX?なんじゃそれ?」でしょう。簡単に説明すると、VFXとは撮影した映像にCGなどを組み合わせることで、現実世界の映像の中に非現実を表現する技術のこと。例えば、ハリウッド映画の『アバター』はVFXを用いた有名な作品のひとつです。今回はそんなVFXの専門家・長竹さんにお話を伺いました。

VFXアーティスト・長竹寿人さん

ここまで読んで「えっ、そんなVFXの専門家が徳島にいるの?」とみなさん思われたことでしょう。今は株式会社オリジナルに所属している長竹さんですが、かつては東京のVFXの第一線で活躍されていました。東京時代には、誰もが知る国内外の大企業のCMや、銀魂・東京喰種などの映画、ミュージックビデオ、上海/ミラノ万博やSXSWなどのイベント用映像、ファイナルファンタジーなどのゲーム制作にもVFXアーティストとして関わっていたという長竹さん。まさに“本物”の専門家なわけですが、長竹さんはなぜVFXの道に進み、なぜ今徳島にいるのでしょうか?

「僕は沖縄出身の東京育ちで、高校からはアメリカに留学していたんですよ。アートスクールに通っている先輩がいたんですけど、その人が学校の課題でニューヨークの地下鉄の映像を作っているのを見て『かっこいいな』と思ったのが映像の道に進むことになったきっかけですね」

高校卒業後はカリフォルニアにある映像の学校『Digital Hollywood Institute of Media and Arts』に進学した長竹さん。そこでCGをはじめVFXのことを学んだといいます。卒業後は日本に帰国し、東京のポストプロダクションの会社に就職、さらにその後、アメリカ時代の先輩が作ったVFXの会社に参加することになったのだそう。

「東京でいろんな大企業の映像制作の仕事をさせていただいていたのですが、ある年に阿波おどりを見に徳島に来たんですよ。それを見て『徳島県人って熱い人たちなんだな』って思って。それに、海も川も山もすぐ近くにあって、子育てにもすごく良いなと思って移住することにしたんです。それからしばらくテレワークのような感じで東京のVFXの仕事をしていました」

東京VFXアーティストから徳島の映像クリエイターへ

その後、徳島のとある交流会に参加したという長竹さん。そこで彼の運命を変える人物と出会います。

「その交流会で株式会社オリジナルの栂岡社長と出会ったんですよ。実は以前に彼のデザインを見たことがあって気にはなっていたんですけど、そこで対面して意気投合したんですよね。それから、オリジナルの社内に席を借りて仕事をするようになって。しばらくは席を間借りしていただけで、そこで東京の仕事をしていたわけですが、栂岡も当時『これから本格的に映像をやっていきたい』と言っていたんです。僕も『徳島にもこんなに面白い人がいるなら、東京の会社を辞めてもいいかな』と思って、オリジナルに入社することになりました」

東京時代の仕事は徳島の仕事に比べて、やはり予算の桁が違っていたそうです。ですが、それが故に大勢のスタッフで業務が細分化されていたといいます。

「東京の仕事での僕の役割は、撮影立ち合い、モーショングラフィックス、プロジェクションマッピングやコンポジット(合成)だったんですよ。合成はCGを使った映像の色調整を含めた最後の仕上げの部分。逆に言うと企画などスタートの部分を含めた他のパートをやることがほとんどなかったわけですが、徳島では映像の企画立案からディレクション、撮影、編集まで全部自分でやる案件もたくさんあります」

企業PRをストーリー仕立てに

東京のVFXアーティストから徳島の映像クリエイターへと転身した長竹さんですが、近年ではさらに活躍の幅を広げています。#徳島ニューノーマル映画祭2022のクロージング作品として上映された縦型映画『TUNNEL VISION』では初めて映画監督を務めたそうです。

「この年齢になって映画監督をさせてもらえる機会があるとは思っていませんでしたが、貴重な経験をさせていただきました。普段は徳島の企業さんの広告映像や、各種PR映像、解説映像、イベント映像などをメインに仕事をしていますが、今後は映画のようなストーリー仕立てでそういった映像を作ってみたいですね」

世にPR映像が溢れ、ありきたりな広告映像が量産されがちな現代において、映画のような企業広告にチャレンジしてみるのは良い方法のひとつかもしれません。まして長竹さんは徳島では唯一無二と言えるスキルを持つ映像クリエイター。長竹さんに依頼すれば、これまでとは一味も二味も違う広告映像ができあがるはずですよ。