2024.07.03

  • クリエイター訪問記

フラットな思考でオリジナリティを追求する

今回やってきたのは、徳島市にあるデザイン事務所『CurllyDesign』。代表の西岡さんは、イラスト表現を得意とするグラフィックデザイナーです。西岡さんの作品の多くにイラストが使われており、そのイラストは作品ごとに多彩なタッチで描かれています。今回はそんなイラストレーターの側面も持つグラフィックデザイナー・西岡さんのインタビューです。

グラフィックデザイナー・西岡賢幸さん

過去の作品を見ると、可愛らしいイラストを描くことが多い西岡さんですが、実際ご本人にお会いすると、なかなかにファンキーな出で立ち。オフィス前にはレトロな旧車が停めてあったり、デスクまわりにはアメリカンヴィンテージなアイテムがたくさん置いてあったりと、作風からイメージできる人物像とは少し違った方でした。そんな、思っていたよりワイルドダンディーな西岡さんは、佐那河内村出身の現在40歳(2024年時点)。グラフィックデザイナー及びイラストレーターとして活躍されているわけですが、クリエイターを志すきっかけは何だったのでしょうか?

「高校を卒業してからは、ガソリンスタンドで働いていたり、クリエイター業とは関係のない仕事をしていたんですよ。でも『自分自身のスキルで仕事をしてみたい』という気持ちがあって、何か手に職をつけようと思い立ちました。そのときのマイブームがヴィンテージ雑貨だったんですけど、その影響でなんとなくデザインかなと思って、穴吹カレッジのグラフィックデザイン学科に通うことにしたんです。だから、そのときのマイブームが違うものだったら、今頃全然違う仕事をしていると思いますね(笑)」

穴吹カレッジを卒業した後は徳島市のデザイン事務所『スタジオアティック』に入社し、グラフィックデザイナーとしてのキャリアをスタートさせた西岡さん。9年間ほど勤めた後、2018年に独立して、個人事務所『CurllyDesign』を開業することになります。

フラットな思考でデザインすること

普通、グラフィックデザイナーのオフィスには全国の有名デザイナーの作品が載っている“デザイン集”のような本がよく置いてあります。ところが、西岡さんのオフィスにはそのようなデザイン集はおろか、自身の過去の作品ですらほとんど置いていませんでした。その理由を西岡さんはこう話します。

「自分の過去の作品も、他人の作品も、ほとんど見ないんですよ。他人のデザインを見てしまうと、それに影響されてしまうというか。例えば、上手な人のデザインを見ると、自分も上手にやろうとしてしまうんです。変にカッコつけたデザインにしてしまいがちなんですよね。だから、余計なものは見ずに、フラットな思考でオリジナルなデザインをするようにしています。だから作品集とかは何も置いていないんですよ」

そして、イラストやデザインを作るときには、最初は一切手を動かさずに頭の中だけでイメージを考えているのだそう。

「まずは頭の中でデザインをイメージして、最初に色を決めるんです。色が決まればデザインも決まるのですが、どこかで見た自然の景色の色や、そのときのマイブームに着想を得て、配色を決めたりしています。最近のマイブームはペナントなので、お気に入りのペナントの色をデザインに採用したりしましたね」

デザインは自分の喜びでなくクライアントの喜び

「デザイナーとしての楽しさや喜びは何ですか?」という質問に西岡さんは少し困った表情を見せます。西岡さんはこういった質問に建前でもっともらしい回答はしない、正直な人のようです。

「僕は、自分のためにデザインをしているわけではなく、お客さんのためにデザインをしているので、その仕事で自分が楽しいとか嬉しいっていう感覚は重要ではなくて、『お客さんが喜んでくれること』が大切だと思っています。以前にラーメン屋さんでお客さんに配布するステッカーを作らせてもらったことがあって、そのステッカーを貼っている車を何度か見かけました。それを見てもちろん嬉しいのは嬉しいのですが、そのことをそのラーメン屋さんが喜んでくれるなら、僕はもっと嬉しく思います」

一見、ドライなように見えて、実はただただクライアントファーストなデザイナーだった西岡さん。そんな西岡さんの今後の活躍に注目したいところです。