2024.07.03

  • クリエイター訪問記

空撮美を追い求めるドローン撮影専門クリエイター

今回のインタビューは阿波市を拠点に活躍するクリエイター・伊丹さん。徳島クリエイターズ・ライブラリでは『フォトグラファー』と『映像クリエイター』の2つのカテゴリで登録されていますが、他の方とは少し違った特色を持つクリエイターです。

空撮クリエイター・伊丹 迅さん

伊丹さんは、フォトグラファー・映像クリエイターの中でも専門分野といえるジャンルを得意としています。それは、空撮、つまりドローン撮影です。ドローンによる空撮は、写真や映像の世界ではまだ歴史の浅い分野ですが、伊丹さんは空撮だけですでに10年以上のキャリアを持っています。

「初めてドローンを手にしたのは2013年で、現在ドローンのトップメーカーであるDJIの初の機体でした。当時は建設コンサルタント会社に勤めていて、その会社の映像制作部門のスタッフだったので普通の映像制作は既にやっていたんですよ。で、初めて空撮をやってみて、その魅力にハマったんですよね。今までにない視点で撮影できるところがすごく良いなと思いました」

ドローン撮影のいわゆる黎明期から空撮に取り組んでいたという伊丹さん。まだ徳島県内のクリエイターがほとんど誰も取り入れていなかったドローンをいち早く導入し、空撮専門のクリエイターとして歩み始めます。

空撮専門の写真・映像クリエイターへ 

「それからしばらくは、その建設コンサルタント会社の映像制作部門でテレビ番組等の制作をしていたのですが、その後、電気工事の会社に転職することになって。でも電気工事の会社とはいえ、実はその会社のメインの事業は空撮だったんですよね。そこでしばらく空撮の仕事をして、2022年10月に独立することになりました」

現在は『伊丹迅写真映像空撮事務所』という屋号で、いわゆるフリーランスとして活動している伊丹さん。国内初のドローン国家資格『無人航空機操縦者技能証明』を取得し、ドローン最新機種のレビュー記事をwebメディアで担当するなど、まさに空撮の専門家として活躍されています。ドローン撮影も含め、映像制作スキルの全てを独学で会得したという伊丹さんですが、自身の映像についてのこだわりをこう話します。

「ドローン撮影においては、まず滑らかに操縦することです。写真の場合は機体を止めて撮るのであまり操縦スキルは関係ないですが、映像の場合は画角が急激に動いたりするとおかしいので極限まで滑らかに操縦することを心掛けています。これはこだわりというわけではないですが、空撮をする上では最低限のスキルです。こだわりとしては、とにかく映像に違和感がないようにすること。映像の画角や構図を作るときに違和感がない自然な表現になるようにしています。構図の理論を考えながら撮影しているわけではないのですが、結果的に自然と美しい構図理論に近い映像になっていると思います」

スローに動かす映像美 

ドローン撮影時の機体操縦は、コントローラーに2本のスティックとダイヤルがあり、3軸で機体をコントロールするため、かなり複雑な動きも可能になります。ですがその分、手先の器用さが必要なのがドローン撮影です。

「自分はたぶん手先が器用な方だと思います。コントローラーの複雑な操作で、いろんな動かし方ができるのですが、実際にどのように飛ばして撮影するかは事前にはほとんど決めていないんです。陸上から見る視点と空から見る視点は全然違うので、どのようにドローンを動かすかは現場で飛ばしてみてから考えるようにしています」

現場でドローンを飛ばしてみないと分からないことがあるというのは、空撮クリエイターならではの仕事の難しさです。さらに、実際の空撮でのポイントを『ゆっくり動かすこと』だと伊丹さんは話します。

「実はドローンはゆっくり動かす方が難しいんですよ。ゆっくり動かしていると、指先のほんの少しのコントロールミスでも映像の違和感に繋がってしまいます。でも、ゆっくり動かす方が映像は上品に見えるし、違和感のない美しい表現になるんです」

伊丹さんの言葉の端々には、空撮に関する自信とプライドが感じられます。それは、空撮の黎明期からずっとドローン撮影を行ってきた経験からなるもの。徳島では希少な空撮専門のクリエイターとして、伊丹さんはこれからも美しい空からの映像を届けてくれることでしょう。