藍住町の自宅兼事務所と徳島市のシェアオフィスを行き来しながら仕事をされているグラフィックデザイナーの日下さん。メインの仕事場は藍住町の方ですが、今回は徳島市南内町にあるシェアオフィス『PARKET』での仕事日にインタビューをさせていただきました。
『カワセミデザイン舎』という屋号で活動されている日下さんは、様々なジャンルのスキルをお持ちですが、ひとつ挙げるとするならば、web制作を得意とするクリエイターです。そんな日下さんですが、子どもの頃から今の職業を目指していたわけではなく、かつては建築家になる夢を持っていたと言います。
「幼少期は何かモノを作るのが好きで、レゴのようなブロックをずっと作り続けるような子どもでした。それで、将来は建築家になりたいと思って、高校卒業後に広島工業大学環境学部環境デザイン学科に進学したんです。当時就職氷河期だったこともあって、結果的に建築家にはならなかったのですが、大学時代に学んだ建築分野には『行動観察学』というものがあって、それは現在のweb制作の仕事にとても役立っていると思います」
人の動線を考える行動観察学が、HPの動線を設計することに生きているのだと話す日下さん。ただ、大学卒業後にすぐクリエイターの道に進んだわけではなく、営業職を経験することになったのだそうです。
「卒業後は広島の不動産会社に就職して営業職をしていました。でも、1年くらいで退職して徳島に帰ってくることになったんです。徳島でも営業職として広告会社に就職したのですが、途中で社内のデザイナーに欠員が出て。それで、急遽デザイナーとしての仕事をすることになったんです」
当時は今と違い、チラシなどの紙媒体のデザインばかりやっていたのだとか。そんな中で、日下さんは次はデザイナーとして別会社に転職し、そこで初めてwebデザインに出会います。
「初めてwebデザインをしたときは、かなり戸惑いましたね。紙媒体と違ってサイズが決まっていないので、どうデザインしていいのか分かりませんでした。今と違ってネットに情報もあまりなかったですし、自分で試行錯誤しながらwebデザインをしていたのを覚えています」
その後、2018年、日下さんが40歳のときにフリーランスとして独立。『カワセミデザイン舎』を設立することになります。
会社員時代が長かった日下さんですが、今現在は一人の独立したクリエイター。そんな日下さんにクリエイティブのこだわりを聞いてみました。
「私には自分の名前を残したいとか、有名になりたいとかいう承認欲求はほとんどないんですよ。クライアントワークでは主役はお客様ですし、クリエイティブにおいては私は黒子であるべきだと思っています。それと、もちろん成果を追い求めること。そのために、クライアントに求められたものが本当に必要なのかどうかを見極めることを大事にしています。例えば『HPを作って』という依頼があったとして、そのクライアントは本質的にはHPが欲しいわけではなくて“集客”という成果が欲しいはずなんです。それで、よくよく考えると、集客のためにはHPではなくてSNSを運用する方が効果的な場合もあるんですよね」
そのため、場合によっては最初に依頼された内容とは全く違う内容の提案をすることもあるのだとか。クリエイターとしてはなかなか勇気のいる提案ですが、それも成果を追い求めるがゆえのことです。
そんな日下さんですが、「今後はまちづくりをやってみたい」と話します。
その一環で行っているのがコミュニティ作り。運営する『徳島もくもく勉強会』では、日下さんと同じフリーランスの方々などを集めて、同じ場所で一緒に勉強や仕事をするというイベントを開催しています。日下さん曰く、「隣に人がいれば気軽に相談もできるし、雑談から何かが生まれたりすることもある」とのこと。確かに、そうかもしれません。一人で煮詰まっている人は、この勉強会に参加してみては?