2021.08.16

  • クリエイター訪問記

クライアントとのパートナーシップで、スモールビジネスを世界へ

経歴、スキル、現在の活動内容、そのどれもが異色と言える若手クリエイター・石原さん。彼は持続可能なクリエイティブを求めるため、単発のデザイン業務等はあまり受けておらず、クライアントとは伴走型の持続的な契約を結んでいます。そんな石原さんの考え方を、少し覗いてみましょう。 

グラフィックデザイナー・デザインストラテジスト 石原 佑さん 

高校卒業後、東京造形大学に進学した石原さん。そこで今後の人生を大きく変える恩師との出会いがあったといいます。

「大学で出会った教授は、元々は工業製品のデザインをしていた人だったのですが、ある日、自分がデザインした商品が道端に捨てられていたのを見て『これまでやってきた自分のデザインはサスティナブルではなかった』と痛感したそうなんです。そこから、“ソーシャルデザイン”を考えるようになったと言っていました」

ソーシャルデザインとは平たく言えば、社会をより良くするためのデザインのこと。その教授からの教えが、今の石原さんの大きな土台になっています。大学卒業後は、恩師からの「就職なんてするな」というアドバイスもあり、すぐにフリーランスのデザイナーとして独立した石原さん。東日本大震災等のボランティアをしていた人脈から様々な仕事に繋がり、なんと北米・バンクーバーに渡ることになったそうです。 

北米でのアートディレクターから徳島での起業へ 

「北米に移住してからはバンクーバーとシアトルの2拠点でフリーランスとして活動し、美術館の企画やフリーマガジンのアートディレクター等をしていました。期間は1年と少しでしたが、その北米での経験でなにか気持ちが大きくなったんですよね(笑)。というのも、アメリカやカナダはひとつの州だけで日本全体よりも大きくて。ちょっと隣町に用事があるっていうレベルでもすごい移動距離なんですよね。その感覚が染み付いてしまったので、日本で起業するなら東京も徳島も全然変わらないなって」 

そうして石原さんは、帰国後の2018年に生まれ故郷の徳島でデザイン会社BLUEを創業することになります。そのBLUEのことを石原さんは「契約制のデザイン会社」だと言います。それは、単発のデザイン受注ではなく、クライアントと持続的なパートナーシップを結ぶこと。その目的は、クライアントと共により良いものを世に送り出すことです。それこそが、石原さんが考えるソーシャルデザインの形。 

見た目だけでなく、事業全体をデザインすること 

「グラフィックデザイナーの仕事って、一般的にはブランドのスタートラインを整えてあげることだと思うんですが、それだけだとスタートから先は僕はノータッチで、クライアントに任せることになってしまいます。それだとデザイナーとしては責任感が弱いかなって。これからは、クライアントが行う事業のサービス内容も含めてデザインしていかないといけない時代だと思っています」

だから伴走型のデザイナーでありたいのだと石原さんは話します。依頼を受けたからには責任を持ってクライアントと共にずっと走り続けるということ。逆に言うと、責任を持てない仕事は受けないということでもあります。そのために石原さんは契約するクライアントの数に制限を設けているのだそう。

「ローカルなスモールビジネスを世界展開していくような仕事がしたい」 最後に、今後の展望をそう語ってくれた石原さん。これからどんな企業とパートナーを組むのか、デザインを通してどんなビジネスを世界に展開していくのか、今から注目しておきましょう。