これまで徳島の様々なクリエイターを紹介してきた当コーナーですが、今回訪問したのはその中でも異色のグラフィックデザイナー・小林さんです。『フードデザイナー』を名乗る彼女は、その名の通り、食に特化したクリエイター。食品関係のパッケージデザインのみならず、レシピ開発など商品そのものの設計から、果ては食品の製造代行までも手掛けています。
やってきたのは小林さんの個人事務所『ユキフードデザインスタジオ』がある『食業工房さなごうち』。今はこの佐那河内村に住んでいる小林さんですが、元々は東京出身の移住組だといいます。
「美術大学を卒業した後は普通の広告代理店に勤めていたんですよ。もちろん食品のパッケージデザインをさせていただく機会はありましたが、食専門というわけではありませんでした。でも私自身、食にすごく興味があったので、飲食業に転職したんですよね。そこで調理スタッフとして働いた後に、とある食品メーカーの新ブランド立ち上げに参加することになって。そこで食の商品作りというものを学ぶことができました」
その後、2017年に東京で独立開業したという小林さんですが、友人の紹介で徳島の仕事を受注したことをきっかけに、2018年徳島に移住することになります。
「徳島にきた当初は自宅の一室で仕事をしていたのですが、レシピ制作をするときには大きなキッチンが必要な場合もあるので、ちょっと不便だったんですよ。そんなとき、『食業工房さなごうち』のことを知って、ここに事務所を構えることにしました」
『食業工房さなごうち』には、いくつもの厨房や様々な調理設備が整っており、フードデザイナーの小林さんにとってはこれ以上ない最高の環境です。この施設内で様々な食品のレシピ開発からパッケージデザイン、製造代行まで、グラフィックデザイナーの枠に収まらない多才さを発揮しています。
書家としての一面も持つ小林さん。その自筆の書が商品のロゴとなり、パッケージデザインの一部になることもありますが、小林さんは近年「パッケージデザインの重要性は薄くなってきている」と話します。
「コロナ禍によって売り方が大きく変わってきています。店頭で販売する数が少なくなってきていて、代わりにネット販売の比重が大きくなっているんですよね。なので店頭で目立たせるためのパッケージデザインっていうのはあまり重要ではなくなってきていて、それよりもネット販売の際の見せ方や写真が大切だと思っています」
ただデザインするだけではなく食の商品開発から手掛けている小林さんならではの視点がそこにはあります。食に関するクリエイティブという意味では、小林さんほど頼りになるクリエイターは他にはなかなかいません。
「今後は熱意のあるクライアントさんと食品の商品開発を一緒にしていきたいなと思っています」
そう話す小林さんの食への熱意は、魅力的な素材やクライアントとの出会いでさらに高まり、これから多くの商品を私たちに届けてくれるはずです。