前編の記事では、クリエイターと障がい者の方たちのマッチングについてご紹介しました。『Tシャツデザイン展』をきっかけに生まれたこれまでにないコラボ作品。さて、一体どのようなTシャツに仕上がったのでしょうか？

Tシャツデザイン展の優秀賞がデザイナーコラボで商品化

こちらが今回商品化されたTシャツのデザイン原画。Tシャツデザイン展で優秀賞を受賞した作品です（商品化された優秀賞作品は5点ありますが、今回はこちらの3作品について取材させていただきました）。この原画を元に、グラフィックデザイナーがTシャツデザインを仕上げています。どんな仕上がりになったのか楽しみですね！ではひとつずつ見てみましょう。

山尾俊介 × 大東浩司　多彩な笑顔のストーリー

まずは、原作者・山尾さん（右）とグラフィックデザイナー・大東さん（左）のペアです。2人が着ているのが実際に商品化されたTシャツ。原作者である山尾さんは『みんなと一緒に』『楽しい』『嬉しい』『キラキラ』をテーマに原作を制作したと言います。普段同じ施設で一緒に過ごす人たちのいろんな笑顔を描いたのだとか。一方、グラフィックデザイナーの大東さんは今回のTシャツデザイン展で審査員も務め、山尾さんの作品を優秀賞に選んでいます。

「イラストで人がたくさん並んでいるんですが、その細かくて緻密な描き込みにとても惹かれました。描かれている人たちにはいろんな表情があって、また多彩な色使いで一人ひとりを表現しているんですよね。それほど多くの色を使っているわけではないのですが、同じ色の人が一人もいなくて。こういった色の使い方や作品の発想は自分にはできないことなので、余計に魅力的に感じましたね」

原作を見たときの感想を大東さんはそう話します。

完成したTシャツには『FUN, HAPPY, AND SPARKLING WITH EVERYONE.』というタイポグラフィが添えられています。和訳するならば、『楽しく、ハッピーで、はじけるみんなの笑顔』。この文字を入れた理由を大東さんは「原作のイラストを見ただけで山尾さんの幸せそうな日常の風景が浮かんだ」からだと言います。

「毎日ハッピーに暮らしている感じ、いろんな人の笑顔に囲まれて日常を過ごしている感じが作品から見えてきたんですよね。そこのストーリーが感じ取れる作品だったのが、一番魅力的だったポイントです」

完成したTシャツは、イラストからも色使いからもタイポグラフィからも、幸せそうなストーリーが確かに感じられます。着た人も幸せになれる、そんな素敵なTシャツに仕上がっていました。

澤口健也 × 近藤哲朗　空（そら）と空（くう）がリンクする

2組目は原作者・澤口さん（右）とグラフィックデザイナー・近藤さん（左）のペア。2人が着ているのが完成したTシャツですが、シンプルですごくかっこいいデザインに仕上がっています。近藤さんは澤口さんの原作についてこう話します。

「審査のとき、選んだ作品が商品化され、たくさんの人に着てもらえることを想像しながら選考にのぞみました。そういう視点で見たとき、澤口さんの作品は多くの人に共感を持ってもらえる、かっこいいTシャツに仕上がるイメージが最初から浮かんだんですよね。『夏の空』という全体のテーマをシンプルに表現していたのも素晴らしいと思いました」

完成したTシャツには澤口さんのイラストの上にフランス語のコピーがのっています。一体これは何と書いてあるのでしょうか？

「澤口さんは般若心経が好きで、よく歌われていると伺いました。それを聞いた瞬間に、般若心経の有名なフレーズ『色即是空 空即是色』が頭に浮かんで。そのフレーズを『目に見えるものだけに、とらわれないで。』というコピーに変換して、最後はフランス語のタイポグラフィにしました」

原作の『空（そら）』のイメージと、般若心経の『空（くう）』がデザイン上でリンクして、ただかっこいいだけじゃない、メッセージ性のあるTシャツになっています。澤口さんが直感的に描いた原作と近藤さんのデザインの見事な融合ですね！

亀川英樹 × 佐藤あすか　素敵な色使いをカラーパレットに

最後は原作者・亀川さん（右）とグラフィックデザイナー・佐藤さん（左）のペアです。とてもポップでカラフルなTシャツに仕上がっていますね！ 亀川さんの原作には、ダンボール、羊、列車、鳥など、様々なものの絵が描かれています。普段は仕事でダンボールを扱う作業をしているという亀川さん。描かれているものは全て亀川さんの好きなものだそうです。審査の際に亀川さんの作品を見た佐藤さんは「もう、一目惚れだった」のだとか。

「この原作を見た瞬間に、平和な感じですごく良いなと思いました。具体的なものを描かれているんですが、どこか抽象的でもあって、見る人がいろんな想像ができるんですよね。私は最初、飛行機のようにも見えて。他にも顔に見える部分もあったり、いろんな要素が散りばめられているんですけど、作品全体として見たときには不思議とまとまりがあるんですよ」

特に原作の色使いに魅力を感じたという佐藤さんは、Tシャツの背面にカラーパレットのように原作から抽出した色を配置しています。こう見ると亀川さんの色使いのセンスの良さがよく分かりますね。このTシャツも着るだけでハッピーになれそうです。

『Tシャツデザイン展』をきっかけに生まれた、障がい者とクリエイターのコラボ作品。この魅力はクリエイター単体の仕事では出せない、と言ってもいいでしょう。どれも、まさしく唯一無二の素敵な作品になりました。障がい者 × クリエイターのコラボは、これからさらに広がっていくかもしれませんよ。